広島・宮島を代表する銘菓もみじ饅頭・高津堂(たかつどう)
にしき堂や藤い屋といった大手メーカーが立ち並ぶ中で、高津堂は「もみじ饅頭をこの世に誕生させた」という唯一無二の歴史的背景を持ちながら、現在は小規模ながらも手作りの温かみと、時代に合わせた柔軟な発想でファンを魅了し続けています。
明治時代から続く物語と、その一粒に込められたこだわりの詳細を解説します。
1. 歴史の重み:もみじ饅頭の「元祖」としての歩み
高津堂の歴史を語ることは、もみじ饅頭の歴史を語ることと同義です。
誕生の背景 明治39年(1906年)、高津堂の創業者である高津常助(たかつ つねすけ)が、宮島の紅葉谷にちなんだお菓子として考案しました。当時の名門旅館「岩惣」の女将から、大切なお客様へのお土産として何かふさわしいものを、と依頼されたのがきっかけと言われています。
一度途絶えた歴史と復活 二代目の急逝などにより、高津堂は一度その暖簾を下ろすことになります。しかし、三代目(現在の店主の父)がその味と形を惜しむ声に応え、2009年に「元祖もみじ饅頭」として見事に復活させました。この「復活劇」こそが、高津堂の製品に宿る熱量の源泉です。
2. 看板商品:元祖もみじ饅頭
高津堂のメインプロダクトは、他社のものとは一線を画す「形」と「食感」にあります。
唯一無二の「形」 一般的なもみじ饅頭は、左右対称で整った「紅葉の葉」の形をしていますが、高津堂のものは少し違います。創業当時の木型を再現しており、葉の先が少し丸みを帯び、より自然な「生きた紅葉」に近い非対称の形をしています。
生地のこだわり 最大の特徴は、生地の食感です。カステラ風のふんわり系とも、最近の「生」タイプとも異なります。高津堂の生地は「しっとり、ねっとり」とした独特の質感があります。これは、創業当時のレシピを守り、独自の配合でじっくりと焼き上げているためで、一口噛むと生地自体の濃厚な旨みが広がります。
上品なこしあん 中のあんは、生地とのバランスを考え抜いた「甘すぎない」仕上がり。生地の力強さに負けない、小豆の風味がしっかり残るこしあんです。
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3. 豊富なラインナップと「攻め」の姿勢
元祖でありながら、高津堂は驚くほど遊び心にあふれたフレーバーを展開しています。
粒あん(つぶあん) 小豆の粒がしっかりと感じられる、食べ応えのある一品。生地のしっとり感と、粒あんの食感のコントラストが絶妙です。
お餅入り(もち入り) 生地の中に柔らかいお餅(求肥)が入っています。高津堂特有のねっとりした生地と合わさることで、まるで「焼き餅」を食べているかのような贅沢感があります。
季節限定・変わり種
ラムネ餡: 鮮やかな水色の餡が入った、夏の名物。
栗・芋: 秋の味覚を贅沢に使った、ほっくりとした味わい。
赤もみじ: 唐辛子を練り込んだり、ベリー系を使ったりと、その時々で「赤」を表現したユニークな限定品が登場します。
洋風フレーバー チョコレートやカスタードクリームはもちろん、チーズや紅茶など、若い世代や外国人観光客にも親しみやすい味が揃っています。
4. 焼き立ての魅力と「揚げもみじ」へのこだわり
宮島口(本土側)の本店では、手焼きの様子を見ることができ、タイミングが合えば出来立てを味わえます。
手焼きの風合い 機械による大量生産ではないため、一つひとつに焼き色の個性が宿ります。この「揺らぎ」こそが、高津堂が愛される理由の一つです。
揚げもみじのバリエーション 紅葉堂が有名な「揚げもみじ」ですが、高津堂でも提供されています。高津堂の濃厚な生地は揚げることで表面がキャラメリゼされたような香ばしさを放ち、中のあんと生地がさらに一体化して、背徳感のある美味しさに昇華されます。
5. パッケージとストーリー性
高津堂の商品は、その包装紙や箱にもこだわりが詰まっています。
レトロモダンなデザイン 明治・大正を彷彿とさせる、どこか懐かしく、それでいて洗練されたパッケージデザインは、ギフトとしての価値を高めています。
「ストーリー」を贈る 「これがもみじ饅頭の始まりの味なんだよ」という一言を添えて渡せるため、お土産話としての付加価値が非常に高いのが特徴です。
6. まとめ:高津堂が守る「一期一会の味」
高津堂は、大手メーカーのような「どこでも買える便利さ」はありません。しかし、だからこそ「わざわざ買いに行く価値がある」一軒です。
伝統を味わいたいなら: 元祖もみじ饅頭(こしあん)
食感を楽しみたいなら: お餅入り
新しい発見をしたいなら: 季節限定の変わり種
2026年現在も、高津堂は「元祖」という肩書きに甘んじることなく、常に新しい美味しさを追求しています。その「しっとり、ねっとり」とした生地の中に、明治からの歴史と職人の情熱がぎゅっと詰まっています。広島を訪れる際は、もみじ饅頭の「ルーツ」に触れる旅として、ぜひ高津堂を訪れてみてください。
