Senbei for Export:海外輸出に向けた製品調整

和菓子の時

Senbei for Export:海外輸出に向けた製品調整

日本の伝統的な米菓である煎餅は、その独特の風味と食感で国内外を問わず人気を集めています。近年、海外市場における日本食への関心の高まりとともに、煎餅の輸出も増加傾向にあります。しかし、海外の消費者に日本の煎餅をより深く理解し、愛してもらうためには、単に輸出するだけでなく、製品そのものへの適切な調整が不可欠です。

本稿では、海外輸出に向けた煎餅の製品調整について、その具体的な内容と、それに伴う留意点、そして今後の展望について掘り下げていきます。

製品調整の目的と重要性

海外輸出に向けた製品調整の最大の目的は、現地の食文化や消費者の嗜好に適合させ、より多くの人々に受け入れられる製品を作り出すことです。これにより、単なる「日本の珍しいお菓子」から、「日常的に食べたくなる美味しいお菓子」へと認識を変えることが可能になります。

具体的には、以下のような目的が挙げられます。

  • 味覚への適合:現地の消費者が好む甘味、塩味、辛味などのバランスを調整します。
  • 食感への適合:硬さ、サクサク感、しっとり感など、現地の食習慣に合った食感を追求します。
  • アレルギー対応:主要アレルゲン(小麦、卵、乳製品、ナッツ類など)への配慮が求められます。
  • 健康志向への対応:低カロリー、低塩分、グルテンフリーといった健康志向のニーズに応えます。
  • 文化的な配慮:宗教上の理由(ハラル、コーシャなど)や、タブーとされる食材への配慮を行います。

これらの調整を行うことで、現地の消費者が安心して、そしてより楽しんで煎餅を味わえるようになります。これは、輸出の成功だけでなく、ブランドイメージの向上にも繋がる重要なプロセスです。

具体的な製品調整の内容

海外輸出に向けた煎餅の製品調整は、多岐にわたります。以下に、主な調整内容を解説します。

1. 味覚の調整

甘味・塩味・辛味のバランス:

日本国内で一般的に親しまれている味付けは、海外では強すぎたり、逆に物足りなかったりする場合があります。例えば、醤油ベースの味付けは、一部の国では塩分が過剰に感じられることがあります。そのため、現地の消費者の嗜好に合わせて、甘味、塩味、辛味の比率を微調整することが重要です。醤油の風味は残しつつ、塩分を抑える、あるいは、現地のスパイスを取り入れるといった工夫が考えられます。

フレーバーの多様化:

定番の醤油味や塩味に加え、現地の消費者が親しみやすい、あるいは興味を持つような新しいフレーバーを開発することも有効です。例えば、東南アジアでは甘辛い味付けが好まれる傾向があり、タイのトムヤムクン風味や、インドネシアのサンバル風味などを応用した煎餅が考えられます。欧米では、チーズ風味やハーブ風味なども人気を集める可能性があります。

2. 食感の調整

硬さとサクサク感:

煎餅の魅力の一つである「パリッ」「サクッ」とした食感は、多くの国で好まれますが、その硬さの度合いは、現地の消費者の食習慣によって異なります。硬すぎる煎餅は、高齢者や子供には食べにくい場合があります。そのため、生地の配合や焼き加減を調整し、より多くの人が食べやすい、適度な硬さとサクサク感を持つ製品を目指します。

一口サイズ化:

海外では、手軽に食べられる一口サイズの製品が好まれる傾向があります。大判の煎餅をそのまま輸出するのではなく、食べやすい大きさにカットしたり、最初から一口サイズで製造したりすることで、利便性を高めることができます。

3. アレルギー対応と健康志向への対応

アレルゲン表示の徹底:

国によってアレルギー表示の義務付けや、消費者のアレルギーに対する意識が異なります。輸出先の国の規制を遵守し、主要アレルゲン(小麦、卵、乳製品、ナッツ類、大豆、えび、かになど)については、原材料表示において明確に表示することが不可欠です。可能であれば、アレルゲンフリーの製品開発も検討に値します。

低塩分・低カロリー化:

近年、世界的に健康志向が高まっており、低塩分、低カロリー、低糖質といったニーズが増加しています。これらのニーズに応えるために、砂糖や塩分の使用量を控えめにしたり、代替甘味料を使用したりするなどの工夫が求められます。

グルテンフリー製品:

欧米を中心に、グルテンフリーの食事が普及しています。米粉を主原料とする煎餅は、本来グルテンフリーに近い製品ですが、製造工程でのコンタミネーション(混入)に注意し、グルテンフリー認証を取得するなど、信頼性を高めることで、新たな市場を開拓できる可能性があります。

4. 包装・パッケージデザインの工夫

言語対応:

パッケージに記載される原材料表示、アレルギー表示、栄養成分表示、そして製品説明などは、輸出先の国の言語に対応させる必要があります。多言語対応は、消費者の理解を深め、購買意欲を高める上で非常に重要です。

デザインのローカライズ:

日本の伝統的なイメージを保ちつつも、現地の文化や美意識に合わせたデザインを取り入れることで、より親しみやすさを感じてもらうことができます。例えば、現地の祝祭日や季節に合わせた限定パッケージなども効果的です。

個包装の採用:

衛生面や携帯性を考慮し、個包装を採用することは、海外市場では一般的です。これにより、一度に食べきれない場合でも品質を保ちやすく、シェアして食べやすいという利点もあります。

その他考慮すべき点

製品調整以外にも、海外輸出を成功させるためには、様々な要素を考慮する必要があります。

1. 法規制と認証

各国には、食品の輸入に関する独自の法規制があります。輸出先の国の食品安全基準、成分規制、表示義務などを事前に調査し、それに適合した製品開発と製造体制を構築することが不可欠です。また、ハラル認証やコーシャ認証などの宗教的な認証は、特定市場への参入において重要な鍵となります。

2. 知的財産権

独自の商品名やパッケージデザインなどは、海外での商標登録を検討し、模倣品や偽造品からブランドを守る必要があります。また、他社の知的財産権を侵害しないよう、事前の調査も重要です。

3. 物流と保管

長距離輸送に耐えうる丈夫な包装や、品質を維持するための適切な保管条件(温度、湿度など)を考慮する必要があります。特に、湿度が高い地域では、湿気対策が重要となります。

4. 市場調査とフィードバック

現地の消費者ニーズを継続的に調査し、製品に対するフィードバックを収集することで、さらなる製品改善に繋げることができます。展示会への出展や、現地のパートナーとの連携も有効な手段です。

まとめ

海外輸出に向けた煎餅の製品調整は、単に味付けや形状を変えるだけでなく、現地の文化、食習慣、健康意識、そして法規制などを総合的に理解し、それらに対応していく包括的なプロセスです。これらの調整を丁寧に行うことで、煎餅は国境を越えて、より多くの人々に愛される、グローバルな食品へと進化していくでしょう。日本の伝統的な煎餅が、世界の食卓を彩る未来は、こうした地道な努力の上に成り立っています。