和菓子情報:せんべいの「米粉」
せんべいにおける米粉の重要性
せんべいは、その独特の食感と香ばしさで古くから親しまれてきた日本の伝統的な和菓子です。その主原料となるのが「米」であり、米を粉末にした「米粉」がせんべいの品質を大きく左右します。米粉の種類によって、せんべいの生地の特性、焼き上がりの食感、風味などが変化するため、せんべい作りにおいて米粉の選択は非常に重要な工程となります。
古くは、米を臼で挽いて作られる「米粉」が一般的でした。しかし、現代においては、製粉技術の進歩により、様々な種類の米粉が流通しており、せんべい作りの多様性を広げています。特に、せんべいの種類によって求められる食感や風味が異なるため、それぞれに適した米粉が使い分けられています。
米粉の種類別特性:上新粉
上新粉は、うるち米(普段私たちが主食としているお米)を原料として作られる米粉です。この「うるち米」という点が、上新粉の最大の特徴であり、せんべいの食感に大きく影響を与えます。
上新粉の製法と特徴
上新粉は、うるち米を水洗いし、乾燥させた後、精米・製粉して作られます。この製粉の過程で、米粒のデンプン質が壊れることで、生地にした際にグルテンを形成しにくい性質を持ちます。グルテンを形成しにくいということは、生地がまとまりにくく、扱いにくいという側面もありますが、これがせんべい特有の「カリッ」「パリッ」とした硬い食感を生み出す要因となります。
上新粉は、粒子が比較的粗いため、生地にした際に空気を抱き込みやすく、焼成時に膨らみやすい性質も持っています。この膨らみが、せんべいの軽やかな食感や、独特の空洞感に繋がります。また、うるち米特有のあっさりとした風味が、せんべいの香ばしさを引き立てる役割も果たします。
上新粉を使ったせんべいの種類
上新粉は、その特性から、主に硬焼きせんべいや、昔ながらの素朴な味わいのせんべいに用いられます。例えば、
- 南部せんべい:青森県や岩手県などの郷土せんべいで、形状は丸く、厚みがあるのが特徴です。上新粉を主原料とすることで、そのしっかりとした歯ごたえと素朴な味わいが楽しめます。
- 醤油せんべい:醤油ダレを絡めて焼き上げる一般的なせんべいの多くは、上新粉をベースとしています。カリッとした食感と、香ばしい醤油の風味が絶妙な組み合わせを生み出します。
- 甘辛せんべい:砂糖やみりんなどで甘辛く味付けされたせんべいも、上新粉の食感が活かされます。
上新粉は、せんべいの「硬さ」と「香ばしさ」を追求する上で、欠かせない存在と言えるでしょう。
米粉の種類別特性:餅粉
餅粉は、もち米を原料として作られる米粉です。もち米はその名の通り、粘り気が強いことが特徴ですが、この粘り気が餅粉を使ったせんべいの食感に独特の変化をもたらします。
餅粉の製法と特徴
餅粉は、もち米を水洗いし、蒸してから乾燥させ、製粉して作られます。もち米のデンプン質は、うるち米とは異なり、加熱されると粘り気を強く出す性質があります。そのため、餅粉を生地にすると、非常に粘り強く、まとまりやすい生地になります。
この粘り気は、せんべいの食感においては、
- もちもちとした食感
- サクサクとした軽やかな食感
のどちらにも応用できるという特徴があります。生地の配合や焼き方によって、その食感は大きく変化します。また、もち米特有の甘みとコクがあり、せんべいに深みのある風味を与えます。
餅粉を使ったせんべいの種類
餅粉は、その粘り気と甘みから、多様なせんべいに活用されます。例えば、
- あられ・おかき:これらは餅米を原料とした米菓であり、餅粉(または餅米を乾燥させて粉砕したもの)を主原料とすることが多いです。カリッとした食感の中に、ほんのりとした粘り気があり、独特の歯ごたえが楽しめます。
- ハッピーターン:あの独特の甘じょっぱいパウダーと、サクサクとした軽い食感が特徴のせんべいですが、その生地には餅粉が配合されていることがあります。これにより、口溶けの良さと軽やかな食感が実現されています。
- ソフトせんべい:最近では、従来の硬いせんべいとは異なり、少し柔らかめで、もちもちとした食感のせんべいも登場しています。これらのせんべいには、餅粉が効果的に使われています。
- 和三盆せんべい:上品な甘さが特徴の和三盆糖を使ったせんべいにも、餅粉が使われることがあります。餅粉の持つコクと甘みが、和三盆糖の繊細な甘みと調和します。
餅粉は、せんべいに「もちもち感」「サクサク感」、そして「コクのある風味」を与えるための重要な素材と言えます。
米粉の種類によるせんべいの違い:まとめ
せんべい作りにおいて、上新粉と餅粉は、それぞれ異なる特性を持ち、せんべいの食感と風味に大きな影響を与えます。どちらの米粉を使うか、あるいは両方をどのように配合するかによって、せんべいの個性は大きく変わります。
- 上新粉:うるち米を原料とし、グルテンを形成しにくいため、「カリッ」「パリッ」とした硬い食感を生み出します。あっさりとした風味で、香ばしさを引き立てます。
- 餅粉:もち米を原料とし、粘り気が強いため、「もちもち」とした食感や、「サクサク」とした軽やかな食感の両方に応用できます。もち米特有の甘みとコクがあり、風味に深みを与えます。
現代のせんべい作りでは、これらの米粉を単独で使うだけでなく、両方をブレンドすることで、より複雑で奥深い食感や風味を持つせんべいを開発することも一般的です。例えば、上新粉のパリッとした食感と、餅粉のもちもちとした食感を組み合わせることで、独特の歯ごたえを楽しむことができるのです。
せんべいを味わう際には、その食感や風味に注目し、どのような米粉が使われているかを想像してみるのも、和菓子を楽しむ新たな視点となるかもしれません。米粉というシンプルな素材が、これほどまでに多様なせんべいを生み出す源となっているのです。
