せんべいの「衛生管理」:食中毒を防ぐための工夫

和菓子の時

せんべいの衛生管理:食中毒を防ぐための工夫

せんべいは、米や小麦粉などを主原料とし、焼き上げることで保存性を高めた日本の伝統的な菓子です。その製造過程における衛生管理は、消費者の安全・安心を確保する上で極めて重要であり、食中毒を未然に防ぐための多岐にわたる工夫が凝らされています。

製造環境の衛生管理

せんべい製造の根幹をなすのは、製造場所の清潔さの維持です。食品工場においては、厳格な衛生基準が定められており、せんべい製造工場も例外ではありません。

工場建屋の構造と維持

工場建屋は、異物混入を防ぐための構造が採用されています。例えば、空気の流入・流出を制御するためのエアシャワーや、微生物の侵入を防ぐための二重扉などが設置されています。また、壁や床は清掃しやすい材質で、隙間がないように設計されています。定期的な清掃・消毒はもちろんのこと、床にひび割れなどが発生した場合は速やかに補修し、衛生的な状態を維持します。

清掃・消毒の徹底

製造ライン、調理器具、作業台、床、壁など、工場内のあらゆる箇所は、定められた手順と頻度で清掃・消毒が行われます。洗剤や殺菌剤の種類、濃度、接触時間などが細かく規定されており、効果的な除菌・殺菌が実施されます。清掃・消毒の記録は厳格に管理され、トレーサビリティを確保しています。

温度・湿度管理

せんべいの製造過程では、原料の保管から焼き上げ、包装に至るまで、各工程で最適な温度・湿度管理が行われます。特に、原料となる米粉や小麦粉は、温度や湿度が高いと微生物が繁殖しやすいため、冷暗所での保管や、一定の温度・湿度に保たれた倉庫での管理が徹底されます。また、焼き上げ後のせんべいが冷却される過程でも、急激な温度変化を避け、適切な湿度を保つことで、品質の劣化や微生物の増殖を防ぎます。

害虫・ねずみ駆除

工場内に害虫やねずみが侵入・生息することを防ぐための対策も重要です。定期的な燻蒸や、粘着シートの設置、侵入経路の遮断(網戸の設置、隙間の封鎖など)が行われます。これらの対策は、専門業者と連携して実施されることも多く、記録も残されます。

原料の衛生管理

せんべいの品質と安全性は、使用される原料の質に大きく左右されます。そのため、原料の受け入れから使用に至るまで、厳格な衛生管理が行われます。

原料の選定と受け入れ検査

信頼できる業者から、品質が保証された原料のみを選定します。原料が工場に搬入される際には、外観検査(異物混入の有無、変色、異臭など)や、必要に応じて微生物検査、アレルゲン検査などが実施されます。基準を満たさない原料は、受け入れが拒否されます。

原料の保管

受け入れられた原料は、それぞれに適した方法で保管されます。米粉や小麦粉などの粉類は、密閉容器に入れ、直射日光や高温多湿を避けた冷暗所で保管されます。これにより、湿気による固まりや、微生物の繁殖を防ぎます。

アレルゲン管理

せんべいには、小麦、大豆、卵、乳製品など、アレルゲンを含む原料が使用される場合があります。これらのアレルゲン物質が、意図せず他の製品に混入することを防ぐため、アレルゲンごとに使用する場所を分けたり、専用の器具を使用したりするなどの対策が講じられます。また、アレルギー表示も徹底されます。

製造工程の衛生管理

せんべいが形になり、消費者の手に渡るまでの製造工程全体で、食中毒のリスクを低減するための工夫が施されます。

交差汚染の防止

製造ラインにおいては、原料の投入から生地の成形、焼き上げ、包装までの各工程で、微生物や異物が意図せず混入することを防ぐための対策が取られます。例えば、作業手順の明確化、清掃・消毒の徹底、器具の使い分けなどが行われます。

加熱殺菌

せんべいの製造において、最も重要な衛生管理の一つが加熱殺菌です。せんべいは、高温のオーブンで焼き上げられるため、この過程で多くの微生物が死滅します。焼き上げ温度と時間は、製品の種類や厚みによって調整され、安全なレベルまで殺菌されるように管理されています。焼きムラがないように、オーブンの温度分布も均一に保たれます。

冷却

焼き上げられたせんべいは、速やかに適切な温度まで冷却されます。熱いまま包装すると、内部に水滴が発生し、カビなどの微生物が繁殖する原因となるためです。冷却室での温度・湿度管理も重要となります。

異物混入防止

製造ラインの設備点検は定期的に行われ、破損した部品などが製品に混入するリスクを排除します。また、作業員は、金属探知機やX線検査機などの異物検出装置を通過した製品のみを包装・出荷します。

従業員の衛生管理

製造に携わる従業員の衛生管理も、食中毒防止に不可欠です。

健康管理

従業員は、定期的に健康診断を受け、食中毒の原因となる細菌(サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌など)の保菌者でないことが確認されます。体調不良や感染症の疑いがある場合は、出勤が制限されます。

手洗い・消毒の徹底

工場内に入る前、作業中、休憩後、トイレ使用後など、定められたタイミングで、従業員は手洗いや手指消毒を徹底します。爪は短く切り、装飾品(指輪、時計、ピアスなど)は着用しません。

作業着・衛生帽の着用

従業員は、清潔な作業着、衛生帽、マスクを着用します。これにより、髪の毛や衣服の繊維、咳やくしゃみによる飛沫などの混入を防ぎます。

教育・訓練

従業員に対しては、衛生管理の重要性、正しい手洗いの方法、異物混入防止策、アレルゲン管理などに関する定期的な教育・訓練が行われます。これにより、従業員一人ひとりの衛生意識を高め、安全な製造体制を維持します。

包装・出荷時の衛生管理

最終製品が消費者の元へ届くまで、包装・出荷段階でも衛生管理は続きます。

包装資材の衛生

せんべいを包装するフィルムや袋などの資材も、衛生的な状態で保管・管理されます。使用直前に開封したり、必要に応じて殺菌処理が行われたりします。包装機械も定期的な清掃・点検が行われます。

検品・検査

包装された製品は、外観検査や重量検査、金属探知機による検査などが行われ、規格外の製品や異物混入の可能性のある製品は排除されます。

保管・輸送

出荷前の製品は、温度・湿度管理された倉庫で保管されます。輸送中も、製品が劣化したり、汚染されたりしないように、適切な温度管理や、清潔な車両が使用されます。

まとめ

せんべいの衛生管理は、単一の対策で完結するものではなく、工場建屋の構造から従業員の意識、原料、製造工程、包装・出荷に至るまで、あらゆる段階で緻密かつ継続的な取り組みが行われています。これらの多層的な工夫により、消費者は安全で美味しいせんべいを安心して楽しむことができるのです。