せんべいの「包装材」:脱酸素剤、乾燥剤の活用

和菓子の時

せんべいの包装材:脱酸素剤、乾燥剤の活用の現状と未来

はじめに

せんべいは、その香ばしい風味とカリッとした食感が魅力のお菓子です。しかし、この繊細な風味と食感を長期間維持するためには、包装材の工夫が不可欠となります。特に、酸素と水分は、せんべいの品質劣化の大きな要因となります。そのため、製造・流通・販売の各段階において、これらの劣化要因を効果的に除去・抑制するための包装技術が進化してきました。本稿では、せんべいの包装材における脱酸素剤と乾燥剤の活用に焦点を当て、その役割、種類、効果、そして今後の展望について詳述します。

脱酸素剤の役割と種類

脱酸素剤は、包装袋内の酸素を吸収することで、せんべいの品質劣化を防ぐ役割を担います。酸素は、せんべいの風味を損なう酸化反応や、カビの発生を促進する原因となります。脱酸素剤を封入することで、包装袋内の酸素濃度を極限まで低下させ、これらの劣化を防ぐことができます。

脱酸素剤の作用機序

現在、せんべいに広く利用されている脱酸素剤は、主に鉄系のものと有機酸系のものに大別されます。

  • 鉄系脱酸素剤:鉄粉が酸素と反応して酸化鉄になるという原理を利用しています。吸湿性のある塩類や触媒とともに粉末状または顆粒状で封入されています。比較的安価であり、長期間の脱酸素効果が期待できるため、多くの食品包装に利用されています。
  • 有機酸系脱酸素剤:アスコルビン酸(ビタミンC)などの有機酸が酸素と反応することで酸素を吸収します。こちらは鉄系に比べて反応速度が速く、低温でも効果を発揮しやすいという特徴があります。また、無機物を含まないため、金属検出機に反応しないという利点もあります。

脱酸素剤の活用による効果

脱酸素剤の活用により、せんべいは以下のような恩恵を受けます。

  • 風味の維持:酸化による風味の劣化を抑制し、焙煎された香ばしさや醤油などの風味が長持ちします。
  • 食感の維持:酸化による油脂の変質を防ぎ、ベタつきや油臭さの発生を抑え、カリッとした食感を保ちます。
  • カビ・微生物の抑制:酸素はカビや好気性菌の生育に不可欠であるため、酸素濃度を下げることでカビの発生を効果的に抑制し、賞味期限を延長することができます。
  • 退色・変色の防止:酸素による色素の酸化を抑え、せんべいの色合いを鮮やかに保ちます。

乾燥剤の役割と種類

乾燥剤は、包装袋内の水分を吸収することで、せんべいの品質を維持する役割を担います。せんべいは乾燥させた食品であるため、吸湿するとベタつきが生じ、食感が損なわれるだけでなく、カビの発生リスクも高まります。乾燥剤を封入することで、包装袋内の水分活性を低く保ち、これらの劣化を防ぎます。

乾燥剤の作用機序

せんべいの包装に用いられる乾燥剤としては、主にシリカゲルと生石灰(酸化カルシウム)が挙げられます。

  • シリカゲル:二酸化ケイ素を主成分とする多孔質の乾燥剤です。吸湿性が高く、再生(乾燥させて再利用)も可能ですが、価格は比較的高めです。食品衛生法に適合しており、安全性が高いとされています。
  • 生石灰:酸化カルシウムのことで、水と反応して水酸化カルシウムになる際に発熱を伴いながら水分を吸収します。吸湿量が非常に大きく、価格も安価ですが、発熱の性質から取り扱いには注意が必要です。水に溶かすとアルカリ性を示すため、食品への直接接触には配慮が必要です。

乾燥剤の活用による効果

乾燥剤の活用により、せんべいは以下のような効果を得ます。

  • 食感の維持:吸湿によるベタつきや湿気っぽさを防ぎ、パリパリとした食感を保ちます。
  • カビ・微生物の抑制:水分活性を低く保つことで、カビや細菌の繁殖を抑制し、賞味期限を延長します。
  • 風味の保護:湿気による風味のぼやけや低下を防ぎ、本来の風味を維持します。

脱酸素剤と乾燥剤の併用

せんべいの品質を最大限に維持するためには、脱酸素剤と乾燥剤を併用することが一般的です。脱酸素剤は酸素による酸化を、乾燥剤は水分による湿気をそれぞれ担当し、二重のバリアを形成します。これにより、せんべいの風味、食感、色合いを長期間にわたって安定させることが可能となります。

併用時の注意点

脱酸素剤と乾燥剤を併用する際には、それぞれの吸湿・吸気能力、使用量、封入タイミングなどが重要となります。

  • 使用量:包装袋の容量、せんべいの種類・量、想定される保管期間などを考慮して、適切な使用量を決定する必要があります。過剰な使用はコスト増につながり、不足は効果の低下を招きます。
  • 封入タイミング:せんべいが熱や湿度に暴露される前に、早期に脱酸素剤や乾燥剤を封入することが重要です。特に脱酸素剤は酸素に触れると活動を開始するため、使用直前まで未開封の状態を保つことが推奨されます。
  • 相性:一部の乾燥剤(特に生石灰)は発熱を伴うため、脱酸素剤の性能に影響を与える可能性があります。製品の設計段階で、専門家に相談し、最適な組み合わせを検討することが重要です。

包装材の進化とその他の工夫

脱酸素剤や乾燥剤の効果を最大限に引き出すためには、包装材そのものの性能も重要です。近年では、酸素や水分の透過を抑制する高機能なフィルムが開発され、利用されています。

高機能包装材

  • バリア性フィルム:ナイロン、PET、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)などの素材を積層したフィルムは、酸素や水蒸気の透過を大幅に抑制します。これにより、脱酸素剤や乾燥剤の寿命を延ばし、効果を持続させることが可能になります。
  • 易開封性:品質を維持しつつも、消費者が容易に開封できるような工夫も進んでいます。レーザーによるマイクロカットや、特殊な接着技術などが活用されています。
  • 環境配慮型包装:近年では、リサイクルしやすい素材や、バイオマスプラスチックなどを利用した環境に配慮した包装材の開発も進んでいます。

その他の工夫

  • 個別包装:複数のせんべいを個包装することで、開封するたびに全体が湿気や酸素に触れることを防ぎ、最後まで新鮮な状態で楽しむことができます。
  • 賞味期限の設定:脱酸素剤や乾燥剤、包装材の性能を考慮した科学的な根拠に基づいた賞味期限が設定されています。

まとめ

せんべいの品質を維持するために、脱酸素剤と乾燥剤は不可欠な役割を担っています。鉄系や有機酸系の脱酸素剤は酸素を吸収し酸化やカビの発生を抑制し、シリカゲルや生石灰などの乾燥剤は水分を吸収し湿気やベタつきを防ぎます。これらの技術は、高機能な包装材や個別包装といった他の工夫と連携し、せんべいの風味と食感を長期間にわたって保つ貢献をしています。今後も、より「高品質」「安全」「環境」に配慮した包装技術の進化が期待されます。